借金問題で苦しむ人の中には浪費が原因という人は少なくありません。女性の中には買い物のし過ぎが原因で借金整理に踏み切る人が数多くいます。
この体験談では、買い物依存が原因で個人再生に至ったケースをご紹介します。
買い物依存症により多重債務者に
今回の相談者はNさん。多重債務が原因で債務整理したいと弁護士事務所を訪ねました。債務整理を知ったきっかけはドラマの影響だそうです。
現代社会において、いかに多重債務で苦しんでいる債務者が多いかを物語っています。借金の理由はショピングでした。といってもNさんの浪費癖は重度で、世間で言われるところの「買い物依存症」の可能性が高かったようです。
Nさんの場合、クレジットやローンではなく、サラ金で借入れた資金でショッピングをしていたので、元金に利息を合わせると収入をはるかに上回った債務であることが一目瞭然でした。借入件数は7件、総額で280万円の借金を抱えていたのです。
Nさんの収入は、月の手取りが18万円、単純に計算しても月々の返済金が7万円ほどです。当時のサラ金業者は、法定利息を超えた利息が設定されている場合が多く、そのことを踏まえて計算すると、およそ9万円の返済を強いられることになります。
選択肢は個人再生か自己破産のどちらか
弁護士は債務整理を試みるにあたって任意整理と特定調停を視野に入れましたが、Nさんの返済期間が短いことから効果的な手段ではないと判断し、個人再生か、自己破産か、選択肢が2つに絞られました。
Nさんの返済期間はわずか半年、これでは「利息の引き直し計算」も「過払い金の返還請求」も得策とは言えません。しかもNさんは借入をしてから全てのサラ金業者に対して利息分しか払っていなかったのです。元金はほぼ借入当時のままとなっていました。
ボーナス無しの年収220万円、毎月の返済が7~9万円、年間の支払総額が100万円前後、現状の借入残高が280万円、この状況を考慮すると自己破産を除いて個人再生で債務を整理するほかありませんでした。そのことをNさんに伝えたところ、目に涙を浮かべながらこれを承諾しました。
個人再生で借金を整理する
Nさんから個人再生の依頼を受けた弁護士は、すぐにでも「受任通知」をサラ金業者宛に発送します。これによりNさんに対しての取り立て行為や督促が不可能となります。
個人再生の手続き中は借金を放置することになり、債務者を保護するためにも依頼を受けた弁護士は、債権者に対して報告する必要があるのです。
個人再生は誰にでも適用されるわけではありません。借金の総額が5,000万円以下であること(住宅ローンを除く)、債務者が継続的な収入を得られる者であること、年収の変動の幅が少ないことが条件となります。
個人再生の大きな特徴は、借金の総額が最大で10分の1まで軽減されるということ。しかし、軽減されても最低のラインを100万円までと定めています。つまり、最低でも100万円以上の借金は返済しなければならないわけです。
例えば、3,000万円の借金であれば300万円、1,000万円であれば200万円、単純に表せばこのようになります。もちろん、手続き次第では軽減が認められない場合もあります。
個人再生の申立てをおこなう
個人再生は地方裁判所に『個人再生の申立て』を行い、『再生計画』を提出することで手続きが開始されます。
申立てとは、簡潔に言えば申請をすることです。『個人再生したいのでお願いします』と規定に従って処理すれば申立てとなります。問題は再生計画です。
再生計画とは、借金を減額し、それを3年間で返済する計画を組み立てたものになります。
弁護士は、Nさんの収入と返済のバランスを考慮した結果、裁判所で定められた減額の最低基準である100万円であれば返済可能であると判断し、再生計画を組み立てました。
弁護士は裁判所に再生計画を提出、個人再生の申立てを行いました。
個人再生が確定するまで
個人再生が確定するまでに、大きく分けて9つの過程をクリアしなければなりません。
- 再生手続の申し立て、保全処分決定
- 監督委員の選任
- 再生手続の開始決定
- 債権の届出
- 財産評定、財産状況の報告
- 債権認否書の提出、債権調査期間
- 再生計画案の作成
- 再生計画案決議、認可
- 再生計画の遂行(債務者の返済が開始される)
個人再生を申し立てしてから個人再生が確定するまで、半年~1年の時間を要することになります。Nさんの場合、申し立てから8ヶ月後に個人再生が確定し、その後、返済が開始されました。
これは余談ですが、弁護士は個人再生が確定するまでの間、Nさんに対してカウンセリングを提案したそうです。依存症は重度になればなるほど容易に解決できる問題ではありません。
個人再生が確定されたので借金の心配は当分ありませんが、今後の生活を考えると改善しておく必要があったのです。
個人再生の確定から1年
Nさんは順調に返済を続けているようです。カウンセリングにも半年通い、買い物依存症を抑えることに成功したようです。収入のことを考えると返済が辛いそうですが『個人再生前の不安を考えるとこれくらい我慢しなければ』と話していました。
近況報告として一番嬉しかった内容は、『彼氏ができた』ということ。そもそもNさんは、数十万円する美容機器や化粧品、エステの使用料やダイエット食品を購入するために借金していたそうです。目的は、綺麗になって彼氏が欲しかったからと。
【Nさんのコメント】※一部を抜粋
今は彼氏ができて幸せな毎日を過ごしています。カウンセリングに行ってよかった。そして、借金を整理して良かったと心から実感しています。毎月の返済は辛いけど、当時のことを思い出せばかなり肩の荷が軽くなりました。
もう、エステや美容に執着していません。買い物も癖も治りました。彼氏が出来たからというわけではなく反省したからです。たくさんの借金を抱えたあのままの状態が続いたら逃げるしかないと思っていました。
今の生活を壊さないためにも買い物依存とサヨナラしたんです。借金を整理していただいてとても感謝しています。
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