個人が債務整理をおこなう場合に特定調停を選択する人は少ないです。しかし、できるだけ費用をかけずに借金整理したい人の中には、ごくまれに特定調停をおこなう人がいます。
ここでは、特定調停により和解が成立し借金減額できたケースをご紹介します。
任意整理よりも費用が安い特定調停を選ぶ
弁護士事務所を訪れたTさんは、勤務先の会社が倒産してしまい、住宅ローンの返済金を確保するために消費者金融から借金をしました。借入件数は3社、総額で150万円です。
現在は飲食店の調理スタッフとして正社員雇用です。収入は25万円から18万円に激減したそうです。以前に比べ収入が減少したTさん、毎月の利息を支払うことしかできず元金は借り入れ当時のまま。会社の同僚から債務整理の話を聞き決意したそうです。
はじめ弁護士は任意整理を勧めましたが、Tさんは弁護士費用のことを考え特定調停を選択しました。基本的に特定調停は弁護士に依頼しなくても債務者本人で行えます。
ですがTさんは、何かと不安も多いとのことで弁護士の協力を求めてやってきたのです。弁護士はTさんに特定調停の流れを説明し、簡易裁判所に特定調停の申立てを行いました。
特定調停の流れ
弁護士は、まず、特定調停の流れをTさんに説明します。その中でTさん本人が行わなければならいない内容も踏まえて特定調停の本質をTさんに話しました。特定調停の流れは次のとおりです。
1 |
簡易裁判所への申立て
この時点で消費者金融は債務者への取立てや督促が不可能となります。 |
2 |
簡易裁判所による調停委員の指定
債権者と債務者の話し合いの仲裁役となる調停委員を裁判所が決定します。 |
3 |
調停成立に向けた当事者間の協議
債務者は今後の返済計画を債権者に提示し、話し合いによる和解を試みます。 |
4 |
調停成立
債権者が債務者の提示した返済計画を了承すれば、裁判所が調停調書を作成します。 |
5 |
返済開始
調停調書の内容に従って返済していきます。 |
特定調停の申立てをおこなう
まずは、「簡易裁判所に特定調停を申立て」します。申立ては原則的に本人が行う手続ですが、弁護士が代理することも可能です。今回は、特定調停申立書、関係権利者一覧表、財産の状況を示す明細書を弁護士が作成し、Tさんが申立ての手続きを行いました。
債権者からの取立てや督促を止めるために裁判所が受領票を発行し、そして、申立てしたことを証明する受理票を消費者金融にFAXします。次に調停委員が決定されTさんは紹介を受けました。
調停委員は裁判所が決定します。調停委員の職業は様々で現役の弁護士や元裁判官などが一般的です。調停委員の主な役割は、債権者と債務者の話し合いにおける進行と仲裁です。
話し合いと言っても基本的には調停委員が返済計画の提示から和解成立までを進行することになります。
特定調停は一度の話し合いで解決するのではなく2度、3度と裁判所に足を運ばなければなりません。
特定調停で提示された返済計画
裁判所の調停委員が『利息の引き直し計算』を行い、債務者の収入状況を考慮したうえで返済計画を設計し債権者に提示します。Tさんの現状と引き直し計算後の債務は以下となります。
現状の債務
借入件数3件 負債総額1,467,026円 年利29.2%
過去の返済回数26回 毎月の返済額およそ4万円(利息の支払いのみ)
引き直し計算後の債務
借入件数3件 負債総額979,977円 年利18%
今後の返済回数36回 毎月の支払額35,308円(元金と利息を含めて)
毎月35,308円ずつを債権者に対して支払うことを条件に、年利18%、3年の返済計画で債権者に和解を提示。しかし、3度目の調停を試みても債権者が納得しません。4度目の調停前にTさんは弁護士事務所を再度訪れ質問しました。『費用を払えば債権者と交渉してくれますか?』と。
要するにTさんは特定調停での解決を諦め、任意整理での解決を試みようとしたわけです。
特定調停で和解が成立した
4度目の調停を終え、債権者はTさんの返済計画を承諾し、総額で487,049円の減額が確定しました。特定調停の和解成立を知り、弁護士も安堵の表情を浮かべ安心したそうです。
特定調停の場合、和解が成立するまでに時間がかかり、最終的には和解不成立で終わることも珍しくないのです。
Tさんは申し立てから50日で和解が成立しました。(通常3~4ヶ月程度)その後、裁判所が「調停証書」を作成し、翌月からTさんの返済が開始されました。なぜ消費者金融が和解に応じたのかは定かではありませんが、なにはともあれ結果オーライです。弁護士自身も「今回の事例は勉強になった」とTさんの借金減額を喜んだそうです。
特定調停のメリット
- 申立てをすることによって、債権者からの取立てが止まる。
- 費用が安く、法律的知識がなくても、調停委員が話し合いを進行してくれるため、債務者にとっては経済的に易しい。
- 利息制限法で定められた18%の利率で、取引当初から計算し直すため、債務額が減額される可能性がある。
- 今後の利息が軽減される。またはカットされる。
特定調停のデメリット
- 「特定調停」で決定した返済計画通りに返済できなかったり、返済が遅れたりすると、強制的に給料や財産を差し押さえられ可能性がある。
- 「任意整理」と異なり、調停の日には必ず裁判所に足を運ばなければならず、手間や時間を要するため仕事や私生活に支障を伴う可能性がある。
- 調停が成立するまでに、最低2~3ヶ月以上はかかり、その期間中に発生する遅延損害金を返済計画の借金に加算される場合がある。
- 「任意整理」とは異なり弁護士が債権者に交渉を行なわないため和解成立の可能性が低い。
経済的な苦境が嘘のようになった
【Tさんのコメント】
特定調停で和解が成立してから17ヶ月が経ちました。現在の借金も60万円以下になり本当に債務整理して良かったと思っています。借金をしてから利息だけの返済が続いていた日々を思い出すと怖くなります。
毎月4万円支払っても元金はそのまま。約2年の間利息だけを支払っていたあの頃には二度と戻りたくないです。あの生活が続いていたらきっと私は返済ができなくなって取立てに怯えながら暮らしていたと思います。その頃はそんなことを毎日のように考えていたら頭がどうにかなりそうでした。
今は毎月の支払いを滞らないように給料をもらったら銀行に預けたままにしています。精神的にも解放されて不安も消えてなくなりました。借金はまだ半分以上残っているので残りの返済も頑張ります。わがままばかりの相談に親切にのってくださりありがとうございました。
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