地方はなぜ時給が安いのか?アルバイト・パートの賃金格差の実態

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アベノミクスの影響でしょうか。先日の日本経済新聞の記事によると、都市部のアルバイト・パートの時給がここ数ヶ月上昇しているようです。

アルバイト・パートの時給上昇が続いている。求人情報大手のリクルートジョブズ(東京・中央)が18日発表した6月の募集時平均時給は、三大都市圏(首都圏・東海・関西)で957円と前年同月比0.8%高い。飲食店従業員の時給が高止まりしている…

「アルバイト時給0.8%高 6月三大都市圏、フード系がけん引」(7月18日)(日本経済新聞から引用)

しかし、このニュース記事は都市圏の話しでした。アルバイトの賃金(時給)は職種や地域によってまちまちですから、果たして、すべての地域で時給が上がっているかどうかは分かりません。

アルバイト・パートには最低賃金というものが毎年決められます。
ここでは、その最低賃金というものがどのように決まるのかをまとめてみました。

日本では、都道府県ごとに最低賃金が異なります。自分が住む地域や職種の最低賃金は把握しておかないと、ひょっとして安い時給で働かされている可能性があります。今でも国が定めた最低賃金を守らないような“ブラック企業”はたくさんあります。

ここでは、最低賃金の仕組みというものを少し勉強してみましょう。

最低賃金とは国が定めた賃金制度

アルバイト・パートにも国が定めた最低賃金というものがあります。最低賃金は各都道府県ごとに個別に決定されますので各々金額は違います。

そして、事業者は決められた最低賃金以上を支払う義務があります。もし、仮に、最低賃金以下の時給で労働契約を交わしたとしても、労働者は最低賃金以上の時給を貰う権利があります。また、今まで最低賃金以下で働いていた場合には、それまで働いた差額を貰うことができます。

事業者側が最低賃金以上の時給を払わない場合には罰則が定められているのです。

最低賃金は2種類あります

  • 「地域別最低賃金」:職種、産業に関係なく、各都道府県で働く労働者とその使用者に対して適用されます。各都道府県ごとに1つずつ定められています。
  • 「特定(産業別)最低賃金」:特定の産業について定められた最低賃金です。労働条件の向上や事業の公正競争確保等の観点から「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されています。

主な特定産業

  • 鉄鋼業
  • 精密機器製造業
  • 電気機器製造業
  • 自動車・附属品製造業
  • 船舶製造・修理業
  • 出版業
  • etc

特定産業は都道府県により異なります。詳しくはお住まいの自治体のホームページを参照下さい。

特定(産業別)最低賃金が適用されないケース

  • 18歳未満または65歳上
  • 雇入れ後一定期間未満の技能習得中
  • その他の当該産業に特有の経緯な業務従事者

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最低賃金はどうやって決まる?

最低賃金の決め方は、まず最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)という代表者委員会において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を参考にて審議を行います。それが決定したら、場所を地方に移し地方最低賃金審議会の中で地域の状況に照らして毎年改正されるのです。

地域ごとに最低賃金が違うのはなぜ?

地域ごとに最低賃金が違うのは、雇用者側の支払い能力というものが取り入れられているためです。地方の場合は、市場規模が小さく中小・零細企業が多いですので、どうしても都市部と比べて売上や利益に大きな差が生じてしまいます。

また、都市部では労働者を求める企業ニーズも旺盛なため時給は高くなる傾向があります。
では、地域ごとの最低賃金はどのようになっているのでしょうか。

この表は厚生労働省が発表した平成25年度の各都道府県の地域別最低賃金(時給)です。

平成25年度地域別最低賃金改定状況

都道府県名 最低賃金時間額円(前年)発効年月日

北海道 734 (719) 平成25年10月18日
青森  665 (654)  平成25年10月24日
岩手  665 (653)  平成25年10月27日
宮城  696 (685)  平成25年10月31日
秋田  665 (654)  平成25年10月26日
山形  665 (654)  平成25年10月24日
福島  675 (664)  平成25年10月6日
茨城  713 (699)  平成25年10月20日
栃木  718 (705)  平成25年10月19日
群馬  707 (696)  平成25年10月13日
埼玉  785 (771)  平成25年10月20日
千葉  777 (756)  平成25年10月18日
東京  869 (850)  平成25年10月19日
神奈川  868 (849)  平成25年10月20日
新潟  701 (689)  平成25年10月26日
富山  712 (700)  平成25年10月6日
石川  704 (693)  平成25年10月19日
福井  701 (690)  平成25年10月13日
山梨  706 (695)  平成25年10月18日
長野  713 (700)  平成25年10月19日
岐阜  724 (713)  平成25年10月19日
静岡  749 (735)  平成25年10月12日
愛知  780 (758)  平成25年10月26日
三重  737 (724)  平成25年10月19日
滋賀  730 (716)  平成25年10月25日
京都  773 (759)  平成25年10月24日
大阪  819 (800)  平成25年10月18日
兵庫  761 (749)  平成25年10月19日
奈良  710 (699)  平成25年10月20日
和歌山  701 (690)  平成25年10月19日
鳥取  664 (653)  平成25年10月25日
島根  664 (652)   平成25年11月6日
岡山  703 (691)  平成25年10月30日
広島  733 (719)  平成25年10月24日
山口  701 (690)  平成25年10月10日
徳島  666 (654)  平成25年10月30日
香川  686 (674)  平成25年10月24日
愛媛  666 (654)  平成25年10月31日
高知  664 (652)  平成25年10月26日
福岡  712 (701)  平成25年10月18日
佐賀  664 (653)  平成25年10月26日
長崎  664 (653)  平成25年10月20日
熊本  664 (653)  平成25年10月30日
大分  664 (653)  平成25年10月20日
宮崎  664 (653)  平成25年11月2日
鹿児島  665 (654)  平成25年10月27日
沖縄  664 (653)  平成25年10月26日
全国加重平均額 764 (749)

※ 括弧書きは、平成24年度地域別最低賃金額

*出典:厚生労働省

最低賃金のまとめ

この最低賃金額の表を見ると、東京が最も高く869円でした。それに次いで神奈川868円、大阪810円、千葉777円、愛知780円、埼玉785円と続きます。最低額は664円で九州、沖縄、山陰地方に集中しています。

このように都市部と地方で大きく賃金差が出ており、最大で200円以上の差があります。

都市部は人口も産業も多いため、この時給差はやむを得ない面がありますが、しかし、ここまで格差が大きいのはちょっと問題ですね。

地方に本社機能の移転を促したり、税金を優遇するなど、富や人口が分散するような取り組みを政府には強く願いたいものです。

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