再現可能な「貯蓄」を増やすノウハウ – 年金なんてあてにならない!と心の片隅で考えている方へ

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貯蓄平均が1624万円!?

突然ですが、あなたはいま、貯蓄がいくらありますか?

300万円?500万円?

ちょっと少ないかもしれませんね。

2人以上の世帯の貯蓄平均額は1624万円というデータがあります。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」の数字です。

2013年調査では1101万円。内訳は

預貯金が55%

株式や投資信託、債券などが16.9%

残りは保険やその他の金融商品とのこと。

「そんなにないよ!」と言う人が多いのではないでしょうか。

確かにそうです。数字のマジックなんです。「平均」という言葉の危うさです。
格差社会が広がる一方の現代社会、庶民には想像もつかないような貯蓄のある人も増えてきました。
データを取る際にそんな極端に大きな数字がまじってくると、平均値は一気に高いほうに振れてしまいます。

例えば99人が500万円でも、5億円の人が1人入るだけで平均は995万円になってしまうのです。
こういう場合は平均値ではなく、「中央値」を見るべきです。数字を小さい順に並べていったとき真ん中に来る数字のことで、この場合だと真ん中にくるのは500万円なので、500万円が普通というのが一般的な感覚といえるのです。

「それなら納得できる。安心した」という方も多いかも。でも、世の中そうは甘くありません。
最初のデータ通りに1624万円の貯蓄があっても安心できないのです。

そうです。老後の備えです。

「まだそんなことを考える年じゃないよ」などと言わず、もう少しお付き合いください。

後半では再現可能な「貯蓄」を増やすノウハウをご紹介します!

頼りの年金、大丈夫?

老後といえば年金。厚生年金と国民年金が大きな柱です。

その柱がぐらぐら揺れています。

日本の公的年金は自営業者らが加入する国民年金とサラリーマンの厚生年金 の「2階建て」構造で、現役世代が給与天引きなどで支払った保険料がこの2階建てを支えています。
でもこれだけでは足りず、年金支給額の半分は税金から払われています。
現役世代からの年金保険料だけなら年金制度はとっくの昔に破綻しているはずなんですから。

「税金が使われているんだったら安心」なんて思う人はいませんよね?
国の財政は青息吐息なのはご存知のはずですから。
消費税増税の大義名分には年金の補填というのも入っていますが、これも焼け石に水で先行きは不透明です。

大黒柱の団塊世代 一転「扶養家族」に

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現役世代からの保険料収入が期待できないのは、さらに大きな問題です。
少子高齢化で支払ってくれる人が少なくなって収入は減る一方。おまけに保険料を払ってくれる大黒柱だった団塊の世代が今では年金をもらう側になって、「扶養家族」になってしまっています。
この世代は人数が多いので扶養するのは大変です。長寿化もあって、この世代が80歳、さらには90歳になっても年金をもらい続けるとなると、年金制度の破綻は目に見えています。

その予感を裏付けるデータがあります。

厚生労働省が今年6月に公表した試算結果

65歳で公的年金を受け取り始めてから90歳になるまでの受給水準の推移を試算したものです。
現役世代の平均収入に対して夫婦2人のモデル世帯が受け取る年金額の比率を示すのが「所得代替率」という数字ですが、予測では現在30~65歳の人は受給が始まる時には現役世代平均の50%を超えるものの、その後は40%台に低下するという見通しだというのです。

試算を具体的に見てみましょう。

現在65歳の1949年生まれの人の場合、夫婦2人のモデル世帯では受給が始まった時の年金の月額は平均21万8000円。
現役世代の手取り収入は月平均34万8000円なので所得代替率は62.7%です。

その後、給付水準は下がっていき、75歳で51.6%、80歳で47.3%、85歳では43.99%に落ち込む、となっています。

おまけにこの試算は「働く女性や高齢者が増え、経済が成長する標準的なケース」という条件付きです。
「経済が成長せず、少子化がさらに進む」という条件では、所得代替率は30%台に低下すると明記されているんです。
経済成長はともかくとしても少子化がさらに進むのは明らかです。モデルケースは絵にかいた餅なんです。

「現役世代の平均収入」というのも曲者です。
現役世代の平均は30代後半になるので、30代後半の人の平均手取りが計算の基礎になります。
なので所得代替率が50%としても、定年間近で高給をもらっている人が「今の収入の半分を年金で受け取れるんだ」なんて思っていたら、落とし穴にはまってしまいます。

年金の不安はまだあります。

年金の支給開始年齢を現在の65歳から68歳ぐらいにまでずらすべきだという議論もあります。
定年年齢を後にずらすのと同時ならともかく、年金だけというのはあまりにも理不尽です。
でも年金を取り巻く情勢を見ていると、あり得ない話とは言えません。

「アリとキリギリス」 ちらつく老後破産の影

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もらえる年金は思っているより少ない、その少ない金額がさらに下がる、おまけに支給年齢もずらされる…となれば、年金はあてにできません。

老後の生活はあまりお金がかからないとはいえ、夫婦2人で年に平均290万円の生活費がかかるというデータ(総務省の「家計調査」)があります。
今の年金レベルでも足りないのに、さらに下がるとなっては 「老後破産」の影がちらつきます。

若い人だったら「先の話。まだそんな心配をする気にならないよ」と思う人が多いでしょうね。

でもイソップの「アリとキリギリス」のお話を思い出してください。
夏の間、アリは冬の食料を蓄えるために働き続け、キリギリスはバイオリンを弾いたり歌を歌ったりして過ごしていました。
冬になって、キリギリスは食べ物を探しても見つからず、飢え死にしてしまいました…というお話。

話の中の「夏」をバリバリ働いている現役世代に、「冬」を退職後に置き換えてみてはいかがでしょう。
寓話の世界の話とは言っていられない不気味さを感じませんか?

大卒サラリーマンの生涯賃金は2億円とも3億円ともいわれます。
多いようにも思えますが、その大半は生活費や家のローン、子どもの教育費、交際費などに消えていきます。

サラリーマンの生涯賃金の2倍も3倍ものお金を1年で稼ぎ出す米大リーグのイチロー選手やACミランの本田圭佑選手ならともかく、普通のサラリーマンは、冬への備えをしなければキリギリスの運命が待っている可能性が高いのです。

コスト意識を持とう!身近なムダのカットから

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ここまで読んでくださったあなたは、「将来への備えも必要かな」と思い始めているかもしれませんね。

それでは一緒に「冬への備え」を考えてみましょう。

まずは身近なところから。やはりムダをなくすことです。
家賃や自動車保険、生命保険、携帯電話代などは口座引き落としなので、意識しないうちに消えていくのでムダに気づかない人が多いようです。

家賃は収入の30%が目安です。一人暮らしなのにムダな部屋がないか、豪華すぎないかとチェックし、30%のラインを超えているようなら引っ越しを考えるべきです。

車をお持ちなら、車が本当に必要なのかも見直しましょう。 自動車保険にはきっとムダな契約条項が入っているはずです。

生命保険や携帯電話の契約プランにもムダな部分があります。

こうした見直しで、月に1万円や2万円はすぐに減らせます。
コスト意識を持つことが資産作りの第一歩です。

今度は貯めることを考えましょう。

まずは銀行の自動積立から。大きな金額から始める必要はありません。
月1000円からでもいいのです。積み立てる習慣をつけるのが肝心なんですから。

余裕が出てきたら積立額を増やしし、50万円、100万円とまとまったら、有利な定期に回します。
注目したいのはネット銀行です。金利の高さが売りなので、こまめに探してみるとけっこう有利に預けられますよ。

[参考]
おすすめネット銀行比較|ザイ・オンライン
http://diamond.jp/category/z-netbank

ハイリスク・ハイリターン 株で稼げるの?

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「アリのように働くだけではつまらない。キリギリスのような生活もしたいよ」という人も多いことでしょう。
生活をエンジョイしながら、もっと効率のよい資産形成をという場合にイメージするのが株式投資ですよね。

確かに魅力的なツールです。
株価の動きに一喜一憂するスリルを味わいながらの利殖。
ネットバブルのころには「30分でウン百万円稼いだ」なんていうデイトレーダーが話題になったこともありましたね。
でも近ごろはそんな話を聞かなくなりました。おいしい話が長続きするはずはないのだから当たり前です。

株のメリットは、うまくいけば大きな利益を得られることと、株主配当を受けられることの2つ。
その一方で、損をすることがあるうえ、元本保証ではないので下手をすれば、株券が紙切れになってしまうリスクもあります。

ローリスク・ローリターン

これに対して定期預金は大きな利益を生むわけではありませんが、元本保証で利子が確実に入ってきます。
ハイリスク・ハイリターンの株と、ローリスク・ローリターンの定期預金。
どちらを選ぶかはあなた次第ですが、ウン百万円もの遊んでいるお金があるならともかく、将来に備えての資産作りに株が不向きなことは明らかです。

どうしても預貯金以外でという人は投資信託はいかがでしょう。
元本は保証されてはいませんが、運用をプロに任せるので安定感があり、有利な資産運用が期待できます。

財形年金貯蓄

やっぱり安定感が一番という人におススメなのが財形年金貯蓄です。
加入できるのは55歳未満で預貯金型と保険型があります。
すべての企業が制度を導入しているというわけではありませんが、給与からの天引きなので知らないうちにちょっとした資産ができています。

そのうえ税の優遇も受けられます。預貯金型は元利合計で550万円まで、保険型は払い込み保険料累計額が385万円までは利子などが非課税扱いです。

お金を貯めていくうえで、税金はけっこう足を引っ張ります。なので、税制を味方にすることが資産形成のスピードアップにつながります。

[参考]
財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄は非課税でお得
http://allabout.co.jp/gm/gc/14035/

私的年金

年金を活用する手もあります。年金は2階建てだと先に書きましたが、実は「3階」もあるのです。

その1つが任意で加入する「私的年金」です。
より豊かな老後の年金をゲットするためのもので、国民年金基金や厚生年金基金などのほか、企業年金の一種として加入者が自分で運用し、その実績によって受け取る給付額が決まる「確定拠出年金」と、企業が運用して受け取る給付額をあらかじめ決めておく「確定給付年金」があります。

給与天引きが使えるので、確実に老後資金を準備することができます。また、積立期間中だけでなく受け取る際にも税制上の優遇を受けられます。

[参考]
確定拠出年金って何?
http://www.goldmansachs.com/japan/gsitm/forum/401k/nani_1.html

確定給付年金と確定拠出年金の違いは?
http://www.goldmansachs.com/japan/gsitm/forum/401k/chigai_1.html

コスパが魅力の「付加年金」をご存知ですか?

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最後に、小粒ながらピカッと光る年金を紹介しましょう。

国民年金の「付加年金」といい、国民年金の老齢基礎年金に上乗せできるお得な年金です。

何がお得かというと、「2年で元が取れる」コストパフォーマンスの高さです。

手続きは簡単。保険料を支払うときに「付加保険料」という保険料を追加して払い込むだけで65歳になってから受け取れます。

例えば付加年金の保険料を10年間(120カ月)支払うとします。
保険料は月400円なので支払総額は4万8000円になります。

将来受け取れる金額は「200円×付加保険料を納付した月数」なので、

年金額は200円×120月=2万4000円。

この金額を毎年受け取れるので2年で元が取れ、それ以降は長生きすればするほどお得になるのです。

10年ではなく、2年間しか納付しなかった場合はどうでしょう。
保険料支払いは24カ月で9600円なので受け取るのは毎年4800円になり、これもやはり2年で回収できるのです。

このお得な年金、もっと高額なのがあるといいのですが、保険料が400円のものだけです。
こんな年金制度で高額なのを作ったりしたら、国が破産しかねませんからね。

「お得なのは分かったけど、その年金制度、金額が少なすぎるなあ」と思っている人はいませんか?

その意識が貯蓄の敵です。

小さいものでもこつこつ続ける、アンテナを張り巡らせて有利な方法を探す、毎日の暮らしにムダがないかをいつもチェックする…こんな積み重ねが老後の安心につながります。

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